恋するplants
「檜に殴られた。初めてだよ、弟に殴られたの。かっこ悪いよな」
くすりと小さく笑う。
やっぱり・・・2人は喧嘩になってしまっていた。
「ごめんなさい、私のせいで・・・」
後悔が押し寄せ、泣きそうになる。
桂さんは気にしないで明るく笑った。
「俺も殴られてすっきりしたし、檜もそうだと思う。こう言っちゃなんだけど、きのこちゃんのことも吹っ切れた気がするよ」
「檜とは・・・仲直りできたんですか?」
「兄貴のことは許せないけど、憎めないって言われた。俺は兄貴を尊敬してるし、好きだからってさ。泣けるよな。だから1発殴れって言ったんだ。思った以上に本気で殴られてこんなことになっちゃったけど」
桂さんは口元にふれると痛そうに顔をしかめた。
桂さん顔を覗き込む。
「きのこちゃんの気持ちは知ってた。檜がどんなに好きなのかも。花火大会の日の君が忘れられなくて、偶然再会したことで運命を感じたことも、あわよくば俺を好きになってくれるかもって欲が出たのも事実だ。でも、俺の自分勝手な思いが結局、周りを傷つけてしまった。きのこちゃん、本当にごめんね」
「いいえ、謝るのは私の方です。檜が素っ気無くて寂しい心を桂さんで埋めてたんです。私って本当にずるいんです」
「そんなことないよ。きのこちゃんと出逢って過ごした今年の夏は楽しかったよ。今度、会うときはお互い笑い話になってるといいな」
「今度、会う時?桂さん、やっぱり旅に出るんですか?」