恋するplants


 「私が好きなのは檜なの。去年の夏の日この場所で、檜が告白してくれて、すごく嬉しかったはずなのに。いつの間にか、一緒にいるのが当たり前になって、バイトばかりする檜が嫌だった。付き合ってるのに1人な気がして寂しかった」


 一気に話して、息を吐いた。


 檜はぽかんを口を開けて私を見ている。


 「そんな時、桂さんが遊びに連れてってくれて、桂さんと檜をつい比べてしまって、気持ちが揺らいでしまったの。ごめんなさい。許して貰えないかもしれないけど、この向日葵の分だけ、私に買えるのは今これだけだけど、檜のことを好きでいさせて」


 花束を檜に差し出した。


 沈黙が流れる。


 去年、私は檜から1輪の向日葵の花束を貰った。


 初デートの記念日に1輪ずつ向日葵を増やしていって、いつか溢れるくらいの大きな花束を渡す日が来たらいいな檜はそう言ってた。


 今年の記念日は色々あって忘れられてしまった。


 反省とこれからもずっと檜を好きでいたいそんな思いを込めて、溢れるくらいに大きな花束を檜に贈ることを思いついた。


 檜は帽子を深く被り直すとそのまま片手で顔を覆った。


 「あ~もう!」


 悔しそうにうなると花束ごと私を抱きしめた。




 ★



 駅まで続く道を檜と手を繋いで歩いた。


 檜の右手には私のあげた大きな向日葵が抱えられ、私の左手には2本の向日葵の花束と薬指には指輪が光っている。


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