恋するplants


 「ぼたんちゃん、彼氏いないの?マジ、俺、立候補しちゃおっかな?」


 「よかったら、アドレス教えてよ~」


 男3人の質問攻めに曖昧に答えながら、ちらりと池見先生を見る。


 池見先生はあの頃と同じように輪の中心で爽やかに笑っている。


 麻田さんたちは大げさに笑いながら、池見先生との会話を楽しんでいるみたいだ。




 「私たち、ちょっとトイレに行ってくるね~」


 合コンも終盤に差し掛かったところで、麻田さんたちがお手洗いにと席を立った。


 池見先生は私たちの輪には加わらず、1人でグラスに残ったカクテルを飲んでいる。


 「ここって2時間までだっけ?そろそろだな・・・どうする2次会?」


 主催者の彼がみんなの顔を順繰りに見る。


 「すみません、私ここで。明日、朝から用事があるんで、あんまり遅くならないうちに帰りたいんです」


 嘘をついた。


 本当は彼らの話も退屈で、池見先生と同じ空間にいるのも耐えられなくてここを早く離れたかった。


 「そっか。よかったらアドレス教えてよ。また飲もう」


 「麻田さんに連絡して下さい。みんなで行きましょう」


 オブラードに包んだつもりが、連絡先は教えたくないという気持ちが相手に伝わってしまったらしい。


 彼はがっかりと肩を落とし、そうするよと力なく笑った。

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