恋するplants
「茉雪のカバン持ってきたから。俺たち、先抜けるから」
池見先生はそう言うと、じゃっと爽やかな笑みを浮かべたまま、私の手を引いて、店を後にした。
エレベーターを降り、歓楽街に出て、駅とは反対方向に池見先生はぐんぐん進んで行った。
頭が混乱してて、池見先生に手を引かれるまま、雑踏の中を歩いた。
外の空気に触れ、冷静さを取り戻すと、前を歩く池見先生に訊ねた。
「どこに行くんですか?」
「秘密」
池見先生はにっこりと笑って振り返った。
★
大きな交差点を渡り、階段を上ると、葉桜の並木道に出た。
木と同じように両サイドに配置されたベンチに、愛を語り合うカップルが
連なる。
目線をどこに向けたらいいのか解らず、池見先生の背中を見た。
並木道を進んだ所を右に曲がると池見先生は足を止めた。
池見先生は私の手を離し、ゆっくりと進み、前方にある柵に両手を置いた。
先は大きな池が広がっていた。
月明かりとぽつぽつと並ぶ街灯で池がぼんやりと映し出されている。
睡蓮の葉っぱがびっちりと池の水面を覆っていた。