恋するplants
「はぁ?な・・・何言ってんの茉雪?」
お茶の缶が秋川の手を滑り、乾いた音を立てて地面に落ちた。
中身がこぼれ、アスファルトに染みを作っていく。
「秋川が彼氏だったらいいかもなぁなんて思ったりして・・・」
蓮と百合さんが乗ってるであろうゴンドラがゆっくりと降りてくる。
秋川は落ちた缶を拾って自動販売機の横のゴミ箱に捨てた。
彼は何も言わなかった。
2人が観覧車から降りて、私たちに合流すると、隣で黙ったままの秋川が立ち上がった。
「すみません、やっぱり気分が良くならないので、今日は先に帰ります」
え?帰るの?
口元に柔らかい笑みを浮かべると秋川は青白い顔でそう言った。
「大丈夫?俺、車だから家まで送ろうか?」
蓮が心配そうに秋川を見つめる。
秋川は風に当たりたいんで大丈夫です、ありがとうございますと丁寧に断った。
「今日はありがとうございました」
お辞儀をして秋川は背中を向けた。
私も慌てて立ち上がり、
「急にすみません」
呆然と私たちを眺める2人に頭を下げて秋川の後を追った。
気をつけてね~と百合さんの声が後ろから聞こえた。