恋するplants
「秋川」
「秋川ってば」
出口に向かってぐんぐん進む秋川は私が呼んでいるのに振り向きもしない。
絶対聞こえてるはずなのに。
「ねぇ、何か怒ってる?私、怒らせるようなこと・・・」
前を歩いてた秋川が突然、振り返った。
「怒ってるよ」
いつも柔らかな笑みを浮かべてる秋川は無表情だった。
初めて見る顔に背中がぞくっとしてその場に立ち止まる。
「茉雪が・・・」
秋川ははぁっと息を短くついた。
「茉雪が僕を男として見たことなんてないだろ・・・なのに、あんなこと言うなよ」
(ねぇ、私たちこのまま、付き合ってみようか?)
さっきの・・・
「こんな思いするなら、今日、ここに来なければよかったよ」
秋川はそう続けた。
下を向き、寂しそうな顔をするとそのまま背を向けて、早足で去って行った。
私はそこに立ち尽くしたままで、秋川をそれ以上追うことは出来なかった。