恋するplants

6時間目



 ★


 溢れてくる涙を手で拭いながら、蓮の家からバス停までの道を走った。


 浜辺に一軒だけ寂しく建つ蓮の家の周りには見事に何もない。


 海岸通りに沿ってぽつりぽつりと灯る街灯を目印にさっき降りた場所の向かい側にあるバス停へと向かった。


 雨が凌げる程度の簡易なバス停の時刻表を目を凝らして見ると次のバスが来るまで30分以上もある。


 時間は夜の8時を過ぎ、辺りは街灯の光だけで真っ暗だ。


 浜辺から潮の香りと暗闇で打ち寄せる波の音が聞こえる。


 涙が乾き、バス停のベンチに1人、腰かけると急に忘れていた寒さを思い出した。


 蓮の部屋の椅子の背もたれにコートをかけたまま出てきてしまった。


 寒いけど、今更取りにいけない。


 両手で二の腕を擦りながら前かがみの姿勢でじっと寒さに耐える。


 白い息と絶えず聞こえる波の音が気持ちを余計にみじめにさせた。


 私、こんなところで一体何してるんだろう?来週にはクリスマスで椿の結婚式も控えてるのに。


 ぼぅと考え事をしていたら眠くなってきた。


 いけない、こんなところで寝たら凍死してしまう・・・時間を確認する。


 まだここに着いてから5分しか経ってなかった。


 嘘。


 こういう時に限って時間って過ぎるのが遅いんだよね。

< 370 / 459 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop