恋するplants


 ウェイトレスがトレンチにシャンパンを乗せて配っている。


 新郎新婦が間もなく到着するのでみんなで乾杯するのだそうだ。


 ウェイトレスからシャンパンを貰い、隣の秋川がグラスに手を伸ばした所でスポーツジムの同僚であろう体格のいい男性がウェイトレスにぶつかってきた。


 男性は電話をしていたらしく、詫びることもなく、外へ出て行った。


 彼女が前のめりの体制になり、持っていたトレンチが手から離れ、シャンパンをぶちまけた。


 秋川が咄嗟に私をかばい、シャンパンをかぶった。


 グラスが床に落ち、割れる音が聞こえ、次々に集まってくるパーティーの参加者たちが短い悲鳴をあげた。


 「すみません、すみません」


 ウェイトレスの女の子は真っ青になり秋川に謝った。


 今にも泣き出しそうである。


 「あ・・・秋川、大丈夫?」


 「うん、水もしたたるイイ男っていうか・・・シャンパンだけどね」


 秋川は何でもないと柔らかい笑みを浮かべていた。


 すぐさま、オーナーらしき人が現われて、てきぱきと辺りを片付けた。


 呆然とするだけでその場に立ち尽くす彼女に、君は悪くないよ、突然ぶつかってきた人が悪いと声を掛けて、恐縮するオーナーに連れられて、秋川はトイレへと向かって行った。


 「・・・すみません」

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