恋するplants
「よもぎさんの淹れたコーヒーがおいしくてすっかりファンになっちゃったんです。あの時は無理言ってすみませんでした」
咄嗟に出た嘘にゆかりがにやりと笑う。
それを見てそっと彼女の口元から手を離した。
「俺こそ、びっくりして素っ気ない態度だったかも?ごめんね、今まで忘れてて・・・あの時はホント色々あって、いまいち記憶が・・・」
いえいえ、こうして今、思い出してくれただけでも嬉しいです。
何?なに?学校祭来てたの?エンターテイナー高木檜のマジック見てくれた?と檜さんが興奮気味に話に入ってきた。
エリカがここぞとばかりに張り切って、すごかったです~と誉めた。
檜さんはまんざらでもない様子でだろ?と大げさに頷いた。
すっかり打ち解けた所で、私たちは応援席へと向かった。
「走れ!草香柏」と長い垂れ幕を持った人が応援席の最前列に座っていた。
グラウンドでウォーミングアップをしている柏が恥ずかしそうに幕を下げろとジェスチャーをしている。
ここまでは距離があるので声が届かないらしい。
応援席のひな壇の一番上の席に私たちは1列に並んで座っていた。
「もしかして、よもぎさんの両親ですか?」
「あ、わかった?・・・ちょっと恥ずかしいんだけどね。息子の試合となると張り切っちゃって・・・」
「よもぎのバスケの試合の時もすごかったもんなぁ~」