恋するplants
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フラスコの中の水が沸騰し始め、琥珀色の液体に変わると芳しい匂いが店内に広がった。
ひんやりとした夜の雰囲気を温かく包んでくれるような感覚を覚える。
火を止め、お湯を入れ温めておいたコーヒーカップに出来たてのコーヒーを注ぐ。
いい香りだ。
これを飲んだらもうひと頑張りだ。
その時だった___
ガランガラン
店の門扉が激しく揺れる音がした。
扉を挟んで向こう側にいるモンブランが反応し、音のする方に向かって吠え出した。
時間は夜中の1時過ぎ、家族はみんな寝静まっている。
僕は震えながら吠えるモンブランを抱きかかえ、店の入り口の鍵を開け、門扉へと向かった。
「すみませ~ん」
石畳のアプローチを進み、門扉に目を凝らすと人が立っているのが見えた。
街灯が照らす影は小柄な女の人だった。
門扉を両手で掴み、激しく揺らしている。
「すみませ~ん、ケーキくらさい」