恋するplants


  女の人は明らかに酔っ払っている。


 足元がおぼつかないし、彼女の足元にはワインのボトルが置かれていた。


 「今、何時だと思ってるんですか?近所迷惑です。店の前で騒がないで下さい」


 僕は動物園のチンパンジーのようにアイアンの門扉にぶら下がる彼女に小声で注意した。


 意外に幼い顔をしていた。


 僕と同世代かもしれない。


 こんな夜中に若い女の子が人気のない住宅街をぶらぶらしてるなんて・・・


 「あの、家、この辺なんですか?夜も遅いし、送りますから」


 彼女を諭すものの、僕の言ってることが理解出来ているのかは怪しい。


v目が据わったまま、僕をじっと睨んでいる。


 「ケーキくらさい。あなたお店の人なんでしょ?くらさいな~」


 彼女は歌いながら踊り出した。


 困った・・・腕の中のモンブランは威嚇を続けている。


 パティシエは兄であって僕ではないし、女の子を夜中、ほったらかしに出来ないし・・・警察に連絡する?それこそ近所迷惑だ。


 「・・・おたんじょうびのケーキくらさい。まだ食べてないんです。食べないと今日が終わらないんれす・・・」


 彼女はぽつりと呟いた。


 語尾が震えている。


 もしかして、泣いてる?ぐすん、ぐすんと鼻を啜る。

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