恋するplants
彼女が現われてからずっと落ち着きなく店内を動き回っていたモンブランは自ら扉を開け、自分の寝床であるバスケットの中へと帰って行った。
警戒心が解けたらしい。
「何かあったんですか?」
今日はもう執筆活動はできないだろうなと諦めと、何が彼女をそうさせたのかが知りたくて僕は彼女を見た。
少しを強張った表情をした後で、彼女は手元のマグカップに視線を落とした。
ふぅっと短いため息を吐いて、
「私、ついてないんです」
悲しそうに笑った。
「彼氏がいたんですよ。付き合ってもうすぐ1年になる」
服飾デザイン系の専門学校に通う彼女は、就職先も決まり、年明けから始まる卒業制作の前にバイトに明け暮れていた。
合コンで知り合った1つ年上の社会人彼とも順調だった。
「私の誕生日は彼の家でお祝いしてねって約束してたんです。ケーキを用意して、子供の時みたいな三角のパーティー帽をかぶって、クラッカーで驚かせてねって」
話を進める内に彼女は鼻声になってきた。
思い出して泣けてきたのかもしれない。
「バイトが終わって、ワイン片手に彼の家に向かったんです。合鍵、貰ってたからそれ使って部屋に入ったら・・・彼、知らない女の人とベッドで抱き合ってました」
僕は顔をしかめた。