恋するplants
ドラマのような不幸な展開が目の前にいる女の子から聞かされている。
「彼、私との約束なんて忘れてたんですよ。私は2番目だったんです。だったら、合鍵渡すなよって感じですよね?帰りにドブ川に捨ててやりました」
堰を切ったように話終えた彼女はカップの中の冷めたミルクを飲んだ。
こんな時、気が利いたセリフの1つも出てこない。
僕は情けない男だ。
「ワインをラッパ飲みしながら、せめてケーキ食べたいなって思ったんです。どうせだったら前に妹が買ってきてくれた Un Joli aman のケーキが食べたくなって歩いてきたんです」
酔っ払った彼女は3駅の距離を歩いてここまで来たらしい。
「すみません、出てきたケーキが不味いパンケーキで、今度は是非、オープンしてる時に来て下さい。兄の作るケーキは僕が作ったのなんかよりずっとおいしいから」
恐縮してそう言うと、彼女は首を横に振った。
「そんなことないです。温かくて、おいしかったです。わざわざ作ってもらってありがとうございました」
それから僕たちはたわいもない会話を続け、夜を明かした。
気付くと僕は自分のベッドで寝ていた。
ぼぅとする頭で時間を確認すると朝の8時を回っていた。
昨日の事って夢だったのかな。
半信半疑で店へと続く階段を降りた。