恋するplants


 山下くんは茉雪に話しかけることなくみんなの輪の中に入っていった。


 畑中椿がちらりとこちらを見、鼻で笑った気がした。


 茉雪はそんなことも知らず、ぼんやりとレーンを眺めている。


 僕は拳をぎゅっと握りしめ、彼女の味方でいようと決心した。




  ★




 午後から振り出した雨はいつの間にか本格的に振り出した。


 昇降口に生徒はいない。


 みんな帰った後なんだろう。


 「傘、持ってる?」


 訊ねると茉雪は力なく首を横に振った。


 「駅まで送っていくよ」


 「ありがとう」


 泣いてはいないものの、茉雪は明らかに無気力だった。


 傘を広げ、茉雪に雨がかからないよう、駅へと向かった。


 茉雪は恋をした。


 6月の初めの頃、教育実習にやって来た先生に。


 がっちりとした体格のいい日に焼けた、爽やかなスポーツマンタイプの人だった。


 茉雪ってこういう人がタイプなのか・・・自分とあまりにもかけ離れていたので、落ち込んだ。


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