恋するplants


 テラスの犬小屋にモンブランを繋ぎ、店へと戻った。


 「あの子は?」


 レジをチェックしていた兄がショーケース越しに訊ねる。


 「今、駅まで送ってきたところだけど?」


 「あらら・・・」


 「どうしたの?」


 「いや、テイクアウト用のケーキショーケースの中で保管してるから帰る時、声かけるように言ってたんだけど・・・忘れちゃったみたいだね」


 あぁ・・・気付いてあげなかった僕も悪いけど。


 そういえば家族の分も買ったって言ってた。


 彼女は帰りの電車でケーキを忘れたことに気づくんだろうか。


 それもまた次の「またね」を待つしかない。




 ★

 

 半地下で階段を降りた所にあるウッディな外観のその店に入った。


 店内は森をイメージしているのか壁には木や小動物のイラストが描かれている。


 「あ、楓ちゃん。いらっしゃい」


 店の奥から水色のワンピースにエプロン姿のかわいい後輩が顔を出した。


 「不○議の国のア○ス」を彷彿させるこの少女は高校の1つ後輩だ。

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