恋するplants


 貸切なので僕の他にお客さんはいない。


 ちょっと小さい子供向けのテーブル席に、本棚には絵本の数々、店内に設けらられたプレイエリアには積み木やブロック、ぬいぐるみが溢れてる。


 バームクーヘンの机にはおもちゃの線路が敷かれ、プラレールが走っている。


 夢の世界がぎゅっと凝縮されたようなカフェだ。


 バイトのわらびちゃんも夢の世界の住人のようでお店にぴったりだ。


 暫らくするとわらびちゃんがトレンチを持って現われた。


 「店長のおごりだって。遠慮しないで食べてね」


 わらびちゃんはニコニコしながら「森のくまさんはちみつトースト」と「野うさぎのラズベリーティー」を僕の前に置いた。


 「わらびちゃんあの棚って何?」


 僕は入り口から入ってすぐ左側にある本棚の隣にある棚を指差した。


 「あぁ、あれね。レンタルスペースだよ。お店で棚のスペースを貸して、アーティストさんたちが作品を持ってきて売るんだよ」


 「へぇ・・・おもしろいね」


 正方形に区切られた棚は20個程あり、それぞれにポストカードやアクセサリーなど多様多種な作品が飾られている。


 わらびちゃんとキッチンから声が掛かり、わらびちゃんはは~いと返事をして、再びキッチンへ戻ってしまった。


 僕ははちみつトーストを食べながらレンタルスペースを眺めていた。
 

 リンゴーン
 

 と入店を知らせる音が鳴ると僕は入り口を振り返った。


 「・・・楓くん?」


 ふわふわした白いワンピースを翻して僕の前に現われたのはイチゴちゃんだった。


 「またね」は予期せぬところでやって来たのだ。
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