恋するplants


  ★


 「イチゴちゃん?」


 イチゴちゃんは大きなトートバックを肩に下げて、店内に入ってきた。


 「今、スタッフの人、料理運んでるみたいだけど」


 スタッフは店長とわらびちゃんしかいないみたいだ。


 僕は店の奥を振り向きながら、わらびちゃんの姿を探す。


 「いいの、私、お客さんじゃないから」


 イチゴちゃんはそう言うとトートバックをバームクーヘン型のテーブルに降ろし、僕の隣に腰かけた。


 「よく、来るの?こういうお店?」


 「まさか。こういうメルヘンな雰囲気は好きだけど、男1人で来る勇気はないよ。実は、高校の後輩がここでバイトしててね。店長さんに頼まれて、プレイスペースで人形劇をすることになったんだ。今日はその打ち合わせ」


 「そうなんだ~。ちょっとびっくりしたよ。でも、すごい偶然」


 「イチゴちゃんはどうしてここに?」


 そう訊ねるとイチゴちゃんはニコニコしながらトートバックの中に手を入れた。


 「ここのレンタルスペースを借りてこんなの売ってるの」


 イチゴちゃんはポーチやポケットティッシュ入れ、ミニトート等をテーブルの上に並べた。


 「へぇ~、器用なものだね」


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