恋するplants


 前からポンポンとボールを蹴る音が聞こえて顔を上げると、私と同じようにオレンジ色に染まった柏がこちらに向かって歩いて来た。


 ネットに入れたサッカーボールを蹴りながら、片手には白い箱を持っている。


 「柏?」


 声を掛けると柏は驚いたように顔をあげた。


 「ちえり、何で?」


 「DVDを借りにきたの」


 柏はショッピングモールがある方をちらりと見るとあぁと頷いた。


 「柏はサッカー?」


 「近くにある運動公園で友達と。・・・ちえり、甘いものって好き?」


 「好きだけどなんで?」


 柏は私の前で立ち止まると、片手に持っていた白い箱をこれ、あげると差し出した。


 何だろうと箱を開けてみると、そこにはチェリーのたくさんのったタルトが2つ、並べて入っていた。


 私が見ても売ってるものじゃないなとわかる見た目だ。


 「手作り?」


 「サッカーやってたらクラスの女子が渡しに来たんだ。」


 日曜日にわざわざ柏に届けに来るなんて、その子は柏のことがよっぽど好きに違いない。


 それを軽く私にあげるなんて・・・。

 
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