恋するplants
ホームの時計を見ると、19時を過ぎていた。
階段を上って改札口へと向かう。
改札口を抜けるとよもぎさんと同じようなショートコートを羽織った柏が立っていた。
手には大きな赤い四角い箱を持っている。
柏は改札口から現われた私を驚いた顔で見上げている。
「ちえり、どこか行ってたのかよ?」
私は柏を無視して駅の外へ出た。
「18時に来いって約束したよな?・・・携帯に連絡してるのに何で出ないんだよ?」
怒った口調の柏が後からついて来るのもかまわず、足早にロータリーに出た。
「おい、何、怒ってんだよ!」
柏が後ろから私のコートの袖を引っ張った。
「離して!」
乱暴に腕を振り払うと柏は手にしていた赤い箱を落とした。
いきなり大きな声を出したから柏は驚いたのかその場に佇んでいた。
柏が落とした箱の上に雪が落ちて行く。
クリスマスなので駅前のロータリーは行き交う人々に賑わっている。
ベンチや噴水が設置されているスペースはちょっとしたイルミネーションが作られている。
最悪の気分なのに。
最悪のクリスマスなのに。
イルミネーションの明かりが滲んで見える。