恋するplants
柏と私
金曜日。
時間は5時を回ったところだ。
私は××駅の改札口の前にいた。
改札口に向かってくる人を眺めながら柏の姿を探した。
いつもなら、この次の電車に乗るはずだ。
行き交う人々を眺めていると、雑踏の中に柏の姿を見つけた。
紫色のダウンジャケットを着た柏が肩にスイミングスクールのバックを掛けてこちらに向かって歩いて来た。
途中で私がいることに気づいたのか柏はこちらの様子を伺いながら人混みに紛れて、改札口を抜けようとした。
「柏!」
見失いそうになって慌てて声を掛けた。
柏は私の方を振り向いたけど、気まずそうに視線を下に落とした。
「・・・久しぶり・・・元気だった?」
柏に駆け寄ると柏はこくんと頷いた。
柏は上目遣いに私を見ておそるおそる訊ねた。
「・・・ちえり、まだ、よも兄のことで俺のこと怒ってる?」
「ううん、怒ってないよ。私の方こそヒドイこと言ってごめんね。・・・今日は柏にきちんと謝りたくて、待ってたの」
柏が素直に嬉しそうな顔をしたの私は心底ホッとした。