恋するplants
恋するカリグラフィー

始筆



  ★


 「パフォーマンス書道?」


 「そう、知ってる?」


 雪が降った1月下旬のある日のことだった。


 放課後、俺は同じ新聞演劇部に在籍する同級生の丸太(まるた)さんに誘われ、学校の近くにあるファミリーレストランに来ていた。


 学校から駅まで続く1本道の途中にあるこのファミレスは価格が安くドリンクバーがあるので、同じ学校の生徒たちがよく利用する。


 今日も、外では雪がしんしんと降っているのに、レストランの中は見慣れた制服で賑わっている。


 レストランの入り口近くのテーブル席に座る俺の向かい側には丸太さんが、丸太さんの隣には見慣れない顔の男子生徒が座っている。


 「映画館のスクリーンくらいの紙に大きな筆で書くやつ?確か映画になってよね?甲子園もあるとか?」


 「そう、それ」


 丸太さんは表情を変えずにしれっと答えた。


 俺はちらりと丸太さんの横の男子生徒を見た。


 どっしりと威厳のある体型の丸太さんとは正反対で彼はひょろりともやしのようだった。


 店内は強めの暖房がかかっているのにも関わらず、鮮やかな黄緑のダッフルコートを着たままだ。


 メガネをかけているので丁度、蛍光灯の光で反射して表情がわからないが、さっきから一言も喋っていない。


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