恋するplants


 白ブタ、白ブタとからかわれ、毎日泣きながら家に帰ってきた。


 幼稚園、小学校と学年が上がるに連れ、いじめはエスカレートしていった。


 腐った牛乳を頭からかけられたり、全裸にされて掃除用具入れに閉じ込められたり、例をあげるとキリがないけれど、そんなヒドイことをされも学校に通えたのは書道があったからだ。



 俺の両親は共働きで、1人っ子の俺の面倒はいつも祖父母が見てくれていた。


 家の離れに書道教室を開く祖父と、母の代わりに家の家事をこなす祖母。


 人付き合いが苦手で友達のいない俺は、離れが遊び場だった。


 祖父が書道を教えてくれた。


 初めて筆を手にした時、祖父は半紙に「芹」という俺の名前を一緒に書いてくれた。


 「芹の名前は爺ちゃんがつけたんだぞ。爺ちゃんの子供の頃にはこの辺も田んぼが広がってってなぁ。春になると芹を摘みに行ったものだ。芹っていうのは一ヶ所に競り合って生えるから「せり」というらしんだ。世の中には競争することがたくさんある。そういう競争に競り勝ってほしい。そういう意味を芹の名前につけたんだ」


 幼い俺は「芹」と言う字をしげしげと見つめた。


 「それに芹は香りが良くてうまい。俺はあれを蕎麦のだし汁に入れるのが好きでな・・・」


 幼い頃の俺がどこまで祖父の話が理解できていたのかは謎だが、俺はその日から「芹」という字を毎日書いた。


 「筆は力を入れず軽く持つんだ」


 「手先だけじゃなく腕全体を動かすんだ」

 
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