恋するplants
「ナズナ、葵くんと帰るから、じゃあね。・・・芹くん、まず痩せた方がいいんじゃない?」
小走りで公園を出る彼女の背中を見送っていたら急に悲しくなった。
結局、俺は利用されてたんだ。
葵くんに自分を良く見せるためのナズナの計画に、それなのに、喜んでた僕はバカだ。
小学校6年生の時、祖父が他界した。
癌だった。
祖父は入院が決まったとき書道教室を閉めた。
進行は遅いものの末期だったため、日々痩せ細っていく祖父をただ見てるだけで何もできなかった。
眠るように安らかに逝ってしまった時、大好きだった祖父の大きな手が
いつの間にか皮と骨だけの筋張った手に代わっていたことに愕然とした。
大好きだった祖父が亡くなってしまい、ぽっかりと心の中に穴が空いてしまった。
痩せ細って死んでしまった祖父の顔がちらついて書に向かうことも筆を持つこともできなくなってしまった。
失恋して、祖父が亡くなって、学校では苛められて・・・どうしようもない虚無感が襲ってきた。
中学時代をただ日々が過ぎることを望み、愛想笑いを浮かべて過ごした。
存在自体が薄くなったのか中学に入るとヒドイ苛めもなくなっていった。
自分を変えようと思って、日頃考えていたことを両親に話したのは卒業を控えた中学3年生の時だ。