恋するplants
「・・・ありがとう、ナズナでいいよ!」
にっこりと俺に向けた笑顔はあの頃と変わらない可愛らしい笑顔だった。
そして俺はまたぬかるみにはまっていく。
結果として、ナズナは振られてしまった。
彼には他に好きな人がいて、2人はどうみても両思いで、ナズナの入る隙なんて初めからなかった。
ナズナは自棄を起こして、彼の好きな子を芹に振り向かせて!などと無茶なことを言い出し、最初はナズナの言う通りに振舞ってみたけれど、自分には到底振り向いてくれそうにないし、逆に俺自身がその子に心が揺れていた。
ナズナとは違う、ころころ変わる表情や元気いっぱいなところ、何より俺に対していつでもストレートに気持ちをぶつけてくれることが嬉しかった。
彼女が彼のものになるのは嫌だ、でも、彼女が悲しむのはもっと嫌だ。
葛藤に苛まれ、俺はナズナとの約束を放棄した。
それで、彼女はめでたくナズナの好きな草香よもぎくんと付き合うことになった。
ナズナの失恋が確定した瞬間だ。
ナズナとはそんなことが起こった2学期の後半からほとんど口を利いていない。
一度、携帯に着信があったが、迷った挙句、リダイヤルはしなかった。
3学期に入り、1ヵ月が経とうとしている。
最近、こちらを見ているナズナの視線を感じる。