恋するplants
だからと言ってどうすることもないのだけど・・・ナズナが何かを言いたそうに唇を噛んでいる姿を横目に教室を出た。
廊下に設置されている個人のロッカーから参考書を取り出すとカバンに放りこんだ。
さて、部室に行こうかと振り向いたところで、丸太さんが仁王立ちしていた。
横には鮮やかな黄緑色のコートを着たお豆くんを引き連れている。
「うわ!・・・何?・・・びっくりした~」
「百聞は一見にしかず・・・白根くん、ちょっといいかしら?」
「これから、部室で先輩たちがパフォーマンス書道のデモストレーションをします!」
お豆くんが甲高い声を上げた。
何だか蒸気機関車みたいだ。
「行くわよ」
丸太さんは俺の腕を掴むとぐんぐん歩き出した。
★
文化部の部室は2号棟からなる校舎の1号棟、3階にあり、書道部の部室は俺の所属する新聞演劇部の部室とは正反対の奥にあった。
学校では書道の授業がないため、書道講師の資格を持つおじいちゃん先生が顧問となり、部の活動を行っているらしい。
扉を開けると、墨の香りが鼻の奥に広がった。
懐かしい匂いだ。