恋するplants
丸太さんはじっと俺を見つめた。
彼女の眼力の強さに思わず目を逸らしたくなる。
「それもあるけど、それだけじゃ・・・」
「白根くんは先輩たちの書を見て何も感じなかったの?少しでもまた筆を持ちたいって思わなかったの?誉められるの嬉しいからだけでやってたんじゃないでしょ?」
彼女が次々と言葉を並べる。
堪らずふっと視線を逸らした。
「俺は・・・」
そう言いかけた時、非常口がバンと勢いよく開いた。
柊部長よりも更に小柄な女の子がほっぺたを膨らませながらこちらを睨んでいる。
草香よもぎの彼女、望月わらびだ。
栗色のウェーブのかかった長い髪を風になびかせ俺の手首をぐっと掴む。
「も~う、2人共、こんなところで何、油売ってんの?芹くん、今日はバスケ部のインタビューに行く約束でしょ?すみれちゃんも文化部のインタビューするんでしょ?きのこ待ってるよ!」
わらびはぷりぷり怒りながら、廊下に出た。
何となく助かったような気がして、俺はわらびに手を引かれながら新聞部の部室に向った。
非常階段の手すりに寄りかかり、顔だけこちらを向く丸太さんは何も言わなかった。