恋するplants
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夕食後、俺は離れに向かった。
祖父が書道教室を開いていた場所だ。
ここに来るのはどれ位ぶりだろう?
書道教室の役割を果たし終えたその離れはすっかり物置と化していた。
きっと埃が積もりに積もって大変なことになってるだろう、そう予測していた俺は引き戸を開け、戸を入ってすぐ横にある電気のスイッチを押した。
プレハブ小屋くらいの大きさのこの離れは入ってすぐにたたきがあり、そこで靴を脱ぐようになっている。
祖母がまめに掃除をしているのか離れの中は埃っぽくなくきちんと整頓されていた。
墨汁がこぼれてもいいよう青いビニールシートで畳を覆っているのは当時のままで、長テーブルや冊子など書道教室として機能していた頃の物が壁側に寄せてある。
その中に祖父の書いた書もあった。
窓を開けて換気をし、部屋の隅に置いてあったハロゲンヒーターを付けた。
積み重なるダンボールの山をなるべく邪魔にならないように隅に寄せ、壁際に畳んである長テーブルを出した。
部屋の中を見渡し、バケツや雑巾などを用意すると、「芹 書道」と走り書きがしてあるダンボールの中を覗いた。
その中から昔使っていた書道セットを取り出した。
中を開けるとカビ臭さが鼻についた。