恋するplants
墨汁はどろどろになっていて使いものにならない。
筆もカビが生え、毛羽立ってしまっている。
その他は何とか大丈夫そうだ。
先生だった祖父が座っていた桐の勉強机の引き出しから新しい筆と半紙を取り出した。
半紙は上の方が茶ばんで風化してしまっていたけど下の方はまだ使えそうだった。
正座をして黒いフェルト地の下敷きの上に半紙を置く、文鎮で紙を押えて、硯の中に、帰りがけ文房具屋で買ってきた新しい墨汁を注ぎ込んだ。
墨で墨汁を溶いて、丁寧に洗ってフノリを落とした新しい筆を中に浸した。
「芹」
久しぶりの筆の感触に少し違和感を覚える。
右手にタコができているからだろうか?
過剰なダイエットを耐えた俺は食べること自体が恐怖になってしまっていた。
リバウンドをするんじゃないかという恐怖だ。
そのため、俺は食べたら吐く癖がついてしまっていた。
ノドの奥に右手の人差し指と中指を突っ込み、吐く。
いつの間にか人差し指と中指にタコでできてしまっていた。
最近は吐き癖もなくなってこのタコも小さくなってきたと思ってたんだけど・・・もう1度・・・