恋するplants
送筆
仏壇から線香を一掴み取って、庭に咲き始めた日本水仙を摘み、新聞紙で包んだ。
玄関でスニーカーの紐をぎゅっと結び直し、着ていたジャージのジッパーを喉元まで上げる。
その場で軽くストレッチをし、イヤホンを耳に付け、用意した線香と花を片手に握りしめると玄関の引き戸を開いた。
冷たい空気を吸い込むと全身がぶるっと震えた。
行くぞと気合いを入れて、走りだす。
今年から、朝一時間起きる時間を早くしてジョギングを始めた。
バランスのいい食事と適度な運動、太らない体を作るために始めたことだ。
さすがに初めは季節が冬なのもあって起きるのが辛かったけれど1ヵ月経った今では、逆に朝走ることで頭がスッキリし、集中して授業が受けられるようになったと思う。
何よりも体が軽かった。
いつもは住んでいる住宅地の区画をぐるりと回って、住宅地の中に設けられている緑道でストレッチをしてから家に帰る。
でも今日は少しコースを外れて走っている。
目指すは住宅地を抜けたところにある小高い丘。
祖父が眠っている墓地のある寺だ。
住宅地を出ると丘の頂上部に向かって階段が伸びている。
その階段を駆け上って門をくぐると小石が敷きつめられた寺の境内に出た。