君との約束~陸上指切りげんまん~
次の日リレーメンバーが発表された。
私はアンカーというシメの大切な所を走ることに。
対して、千夏は3走者目だ。
「頑張ろうね。利歩!」
「うん!!」
とりあえずあの事は忘れよう。
考えていたら足手まといになってうろうろしてしまう。
朝のミーティングが終了し、クラスに戻って呟いた。
「ごめんー・・・」


教室のカーテンが揺れる、心地よい風が窓から入ってくる。
珍しく、教室は静まりかえっていて、シャーペン音と先生の話がするだけだった。
海は私と同じクラスでうるさい奴だが今日は海こそ静かだった。





掃除の時間を知らせるチャイム。
「っぷあー!!」
今日の授業は全く頭に入らなかった。
ほうきを持って、うろうろしていると君の声がした。
「利歩。」
「!?」
「んだよ。今日はやけに静かだな。」
「うん。おかげさまで。」
「ああ、なんだかわからんが。とりあえずお前リレーメンバーおめでとう。」
ああ。やめてほしい。その笑顔。
海を見るとリレーどころじゃない。
「あ、ありがとう。」
「リレーの他に何出んの?」
「ああ!?忘れてた!!」
昨日は千夏の突然発表で考える暇など無かった。
「じやあさ。100m出てくんない?」
「え?100m?」
海がいきなり100m出ろ!なんて私にいってきたのはやけに不思議だ。
「いいけど。どうして?」
「勝負!」
優しいデコピンを私に当てる。
「勝負!?」
「お前は100mを13.20で走る。俺は1500mの新記録出す。」
「ええ!?13.20?」
「ああ。余裕だろ?」
ニヤニヤする海。
「ええ!?なんで勝負なの!?意味わかんない!!」
頭の中がひどくごちゃごちゃに。
「理由は、秘密。大会で勝ったら教えてやる。」
「・・・」
わかんないけど。その理由がすごく気になる。
「わかったよ。海!」
「よし、指切りな。」
私達は指切りした。
海の笑顔を見るたび胸が苦しくなる。
千夏の約束と海との約束。
2つ守るのはやたら難しい気がするけども、しょうがない。

ねえ千夏。
応援するけど、海のことやっぱり見ちゃう。
どうしてかな。やっぱり好きなのかな?ごめんね。約束守れなかったら。

「ああ。でもこんなことより練習!!」
教室のベランダでほうきを振り回して言った大きな独り言。

私のちょぴり憂鬱なスタートダッシュだった。
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