真夜中に口笛が聞こえる
◇第二章 新生活
家族三人による、新居での新生活が始ろうとしている。
結局、信一郎と美咲の夫婦は、あの白い物件の購入する方向で一致し、価格交渉を経て、正式にローンを組んで購入した。
土地と物件の引き渡しが滞りなく行われると、電気や水道、ガスの開通手続きを待って、家族は早々に引っ越しを行った。
そもそも引っ越し願望の強かった夫婦である。荷物をまとめるのが速いだけではなく、引き揚げる手筈にも迷いはなかった。
近所への挨拶を済ませると、生活必需品が無くなったマンションで、さながらキャンプのような一夜を過ごした。
「美咲。こうしてものがなくなると、結構、広かったんだね」
信一郎がしみじみと言う。
「そうよね。何ですぐに一杯になっちゃうのかしらね」
缶ビールを開けて、二人で乾杯した。
アルミ缶のぶつかる音が、シラケるほどに軽々しい。
寝袋の中で、美佳が静かに寝息をたてている。
「さよならね。この部屋とも」
「ああ。僕たちはよく頑張ったよ。この空間で」
信一郎はそういうと、もう一度、美咲の缶ビールに、自分の缶ビールを当てた。
中身が減っていたせいか、さっきよりも少しだけ違う音がした。
結局、信一郎と美咲の夫婦は、あの白い物件の購入する方向で一致し、価格交渉を経て、正式にローンを組んで購入した。
土地と物件の引き渡しが滞りなく行われると、電気や水道、ガスの開通手続きを待って、家族は早々に引っ越しを行った。
そもそも引っ越し願望の強かった夫婦である。荷物をまとめるのが速いだけではなく、引き揚げる手筈にも迷いはなかった。
近所への挨拶を済ませると、生活必需品が無くなったマンションで、さながらキャンプのような一夜を過ごした。
「美咲。こうしてものがなくなると、結構、広かったんだね」
信一郎がしみじみと言う。
「そうよね。何ですぐに一杯になっちゃうのかしらね」
缶ビールを開けて、二人で乾杯した。
アルミ缶のぶつかる音が、シラケるほどに軽々しい。
寝袋の中で、美佳が静かに寝息をたてている。
「さよならね。この部屋とも」
「ああ。僕たちはよく頑張ったよ。この空間で」
信一郎はそういうと、もう一度、美咲の缶ビールに、自分の缶ビールを当てた。
中身が減っていたせいか、さっきよりも少しだけ違う音がした。