真夜中に口笛が聞こえる
──事件から二年後。
「うう、うあああ……」
信一郎は叫び声を上げた。
美咲がいて、美佳がいる。
ありきたりの家庭。そして、どこにでもある夕食でのヒトコマだった。
今回の事件をキッカケに左腕を失った信一郎が、食事中に苦しみ出した。
「どうしたの!」
回り込んで、美咲が背中を擦る。
口元を押さえ、信一郎はまだ、苦しんでいる。
「ぐえっ」
緑色の塊が、食卓に吐き出された。
「なんだ、これは……」
白い皿にべったりと付いた色に、体が震える。
ガムのような物体。
この色……。
信一郎に見覚えがある。
「薬、早く飲んで!」
美咲が戸棚から出す。
袋を逆さまにすると、何種類もの錠剤が落ちる。
信一郎はそれらを掻き集め、次々に開封しては、口の中に放り込む。
美咲から差し出された水の入ったコップを掴むと、一気に飲み干した。
そこでようやく、信一郎は一息つくことが出来た。
「ねえ。薬、飲んでなかったの?」
「なんなんだよ。一体、どうなってるんだ?」
薬の残骸を忌々しく眺めた。右手で新聞の上からテーブルを、バンと叩く。
手の下敷きになった新聞には、行方不明となっていた著名なジャーナリスト、金山静江の車が、海中で見付かったとの見出しがあった。
「本当にどうなってしまうんだ、この先……」
信一郎は頭を抱えた。
美咲が寄り添う。
美佳は席を立つこともなく、その様子をじっと見ていた。
第十一章
「それから」
完結
「うう、うあああ……」
信一郎は叫び声を上げた。
美咲がいて、美佳がいる。
ありきたりの家庭。そして、どこにでもある夕食でのヒトコマだった。
今回の事件をキッカケに左腕を失った信一郎が、食事中に苦しみ出した。
「どうしたの!」
回り込んで、美咲が背中を擦る。
口元を押さえ、信一郎はまだ、苦しんでいる。
「ぐえっ」
緑色の塊が、食卓に吐き出された。
「なんだ、これは……」
白い皿にべったりと付いた色に、体が震える。
ガムのような物体。
この色……。
信一郎に見覚えがある。
「薬、早く飲んで!」
美咲が戸棚から出す。
袋を逆さまにすると、何種類もの錠剤が落ちる。
信一郎はそれらを掻き集め、次々に開封しては、口の中に放り込む。
美咲から差し出された水の入ったコップを掴むと、一気に飲み干した。
そこでようやく、信一郎は一息つくことが出来た。
「ねえ。薬、飲んでなかったの?」
「なんなんだよ。一体、どうなってるんだ?」
薬の残骸を忌々しく眺めた。右手で新聞の上からテーブルを、バンと叩く。
手の下敷きになった新聞には、行方不明となっていた著名なジャーナリスト、金山静江の車が、海中で見付かったとの見出しがあった。
「本当にどうなってしまうんだ、この先……」
信一郎は頭を抱えた。
美咲が寄り添う。
美佳は席を立つこともなく、その様子をじっと見ていた。
第十一章
「それから」
完結