真夜中に口笛が聞こえる
◇エピローグ
高崎信一郎と金山静江が死亡して、一ヶ月が経った頃、母親に付き添われた美佳が、越石の元を訪ねていた。
診察室で行儀よく座っている美佳に、越石が聞く。
「美佳ちゃんは、どうやって縛られている状態から抜け出したの?」
美咲が美佳の衣服の袖口をずらす。
「これです」
美佳はそう言うと、両手首を差し出した。
越石が確認する。ブレスレットのようにも見えたが、紛れもなく植物だった。それも、美佳の血管から生えている。
「これ、いつから?」
「父が死んでから、特にひどくなったみたいで。でも、あの時、既に棘が出ていたんです。だから梱包テープで縛られてたんですが、手首を擦っていたらテープが切れたんです」
確かに鋸のようになったに違いない。越石は美佳の手首を見ながら、想像した。
「先生、私、このまま化け物になっちゃうの? 助からないの?」
美佳の両肩に美咲が手を置く。
「お母さん、それに美佳ちゃん。よく聞いて下さい。私は医者でもあるが、研究員なんです。だから普通の医者がよく使う気休めは苦手なのです」
こう、切り出した越石の言葉を、二人が呑み込む。
「いいですか。これからお薬を差し上げます。私を信じて、決められた量を決められた時間に、必ず服用して下さい。お父さんが飲んでいたものと同じ薬です。研究の成果ですが、何とか変貌を食い止める事は出来ます」
越石は美佳の手首をペンで指し示した。
診察室で行儀よく座っている美佳に、越石が聞く。
「美佳ちゃんは、どうやって縛られている状態から抜け出したの?」
美咲が美佳の衣服の袖口をずらす。
「これです」
美佳はそう言うと、両手首を差し出した。
越石が確認する。ブレスレットのようにも見えたが、紛れもなく植物だった。それも、美佳の血管から生えている。
「これ、いつから?」
「父が死んでから、特にひどくなったみたいで。でも、あの時、既に棘が出ていたんです。だから梱包テープで縛られてたんですが、手首を擦っていたらテープが切れたんです」
確かに鋸のようになったに違いない。越石は美佳の手首を見ながら、想像した。
「先生、私、このまま化け物になっちゃうの? 助からないの?」
美佳の両肩に美咲が手を置く。
「お母さん、それに美佳ちゃん。よく聞いて下さい。私は医者でもあるが、研究員なんです。だから普通の医者がよく使う気休めは苦手なのです」
こう、切り出した越石の言葉を、二人が呑み込む。
「いいですか。これからお薬を差し上げます。私を信じて、決められた量を決められた時間に、必ず服用して下さい。お父さんが飲んでいたものと同じ薬です。研究の成果ですが、何とか変貌を食い止める事は出来ます」
越石は美佳の手首をペンで指し示した。