Jet Black
「…こずえは、守護者だって言ってたけど」

「ま、簡単に言うなら守護霊だな。こずえ自身が霊と呼ばれるのを好まないものでね」

「あ、だから」

 つい先程落下したお盆を思い出して、凌は思わず頭に手をやる。

「…あとは何が聞きたい?」

「…この店、今まで見たことなかったけど。これも魔法ってヤツ?」

「…ああ、ここはこの店を知っているものしか見えないからな」

 君の場合は、こずえが案内したせいだろう。

 こずえをちらりと見やるとにっこり笑われた。

 そういやあの声はこずえだ。

 今更思い付いて、大きく息を吐き出した。

「…それからもう一つ」

 蒼居の声のトーンが変わる。これが本題なのだと肌で感じた。

「俺は人間じゃない。魔法使いと呼ばれるのもそれが所以だ」

 ああ、そうか。君は…やっぱり。

「…なあ、蒼居。最後に一つだけ聞かせて欲しい」

 ―――君は。

「『黒い騎士』を、知っているんだな」

 微笑んだ蒼居と、驚愕の表情のこずえ。

 そのアンバランスさに何故か強く安堵を抱いた。




―――やっと、遭えた。



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