Jet Black




 小さな変化に、少しだけ胸を踊らせた。




 緊張していると、結構時が経つのは早いものらしい。

 それから三日。

 学校を終わらせた凌を校門横で待っていたのは、見覚えのある黒と、シルバーの車。

 振り返る女生徒たちを見向きもせず、蒼居は凌に目を止めると口許に笑みを浮かべた。

「おかえり」

「…なんでいる」

 思わず凌が口走った言葉に、蒼居は苦笑で返す。

「このまま行った方がいいかと思ってね」

「で、車?」

 運転できんの?と視線をやれば、免許証を差し出された。

「ばっちし国際免許つき」

「…うわ。何かマジ似合いそうでヤダ」

「褒め言葉として受け取っておこう」

 微笑みを絶やさずに、蒼居は助手席のドアを開けた。

「さ、どうぞ」

 一睨みして助手席に乗り込む。

 扉を閉めたことを確認して、蒼居は運転席に乗り込んだ。

「…明日学校で噂になったら蒼居のせいだ」

「そりゃすまない。拉致されたとでも言っておけばいい」

 洒落になんねえと呟いて、凌はふと何かに気付いたように蒼居に視線を向けた。

「そういや、蒼居って人間じゃないんだろ。良く免許が取れたな」

「ほう、俺が人間じゃないと信じるのか」

 ちらりと蒼居の視線が自分に向く。

「…そういう風に説明したのは蒼居だろ」

 む、と口を尖らせた凌に蒼居はくすりと笑う。

「そうだな。これは裏ルートで手に入れてね。ちなみに国籍もあるよ。…つまり偽」

「言わなくていいッ!」

 低く笑う蒼居から慌てて視線をずらすと、ようやく車は滑るようにスタートした。




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