二度目の片思い
……ああ、そっか。

なんで俺、勘違いしちゃってたんだろうな。

自分と彼女の間には、何も特別な空気なんて、なかったのに。


俺は無理やり、目の前の藤咲に向かって笑顔を浮かべた。



「……そっか。藤咲、ありがとな」

「う、ううん」

「ありがたく、受け取っとく。藤咲も、元気で」



言いながら俺は、早くこの場を去りたくて。

くるりと足の向きを変えながら、片手を挙げた。



「──それじゃあまた、卒業式にな」

「……うん。また、卒業式に」

「ああ。ほんとに、サンキューな。藤咲」



今度こそ彼女に背中を向けて、俺は歩き出す。

校舎の角を曲がり、藤咲からは見えない位置に来てから。はぁっと深い息を吐いて、その場にしゃがみこんだ。



「……馬鹿か、俺は……」




きっと今が、彼女に想いを伝える、最上のタイミングだった。

……だけど俺は、逃げた。彼女に拒否されるのが怖くて、俺は逃げたのだ。



「あ゛~、もう、」



自分がこんなに、ヘタレだったなんて。彼女をすきになるまで、知らなかった。

そうして俺は、彼女への想いを封印する覚悟をして。

ようやくその場に立ち上がり、歩き出した。
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