二度目の片思い

「いいなぁ、俺野球一筋だから、それっぽい名前がよかった」

「えぇ? 例えば?」

「うーん、『三塁』とか。だってスリーベースヒット打ちたいじゃん」



大真面目な顔から飛び出した突拍子のないせりふに、私は堪えきれずぷっと吹き出してしまう。



「あはは、何それー。人の名前として成立してないよ」

「ああそれか、『全部打つ』で『全打』とかでもよかった」

「それもヒドイ!」



けらけら笑う私に、それまで作ったような真顔をしていた彼がふっと笑みを浮かべて。

その表情の変化に、思わずどきっと胸が高鳴る。

そしてそんな私の前へ、スッと、彼の右手が差し出された。



「越田 和晴。野球部でキャッチャーしてます」

「……藤咲 彩音。吹奏楽部で、トランペット吹いてます」



若干気後れしつつもその手を握り返して、同じように自己紹介をすると。

越田くんはまた、屈託なく笑った。
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