二度目の片思い
「えーっと、藤咲どうした?」

「あ、あの……ここじゃちょっとアレだから、場所移動してもいい?」

「……ん、いいよ」



頷いて彼は、おとなしく私の後を付いてきてくれた。

わたしは人気のない校舎裏へと、足を進める。

そうしてようやく立ち止まり、くるりと彼を振り返った。



「ごめんね越田くん、わざわざ来てもらっちゃって」

「いや、別にそれはいいけど」

「……あのね、実は、これ……」



言いながら私は、持っていたカバンの中から小ぶりな紙袋を大事に取り出した。

そしてそれを、彼に向かって差し出す。

越田くんが、驚いたように瞠目した。



「──これ、」

「えっと、今日バレンタインでしょ? だからこれ、口に合うかわからないけど、チョコ」



うつむきがちに、だけど精一杯微笑みながら、私は紙袋を彼に手渡す。

受け取った彼は、戸惑ったようにまた、口を開いた。



「わざわざ、持ってきてくれたの?」

「あ、えっと……ちょうど私も、部の方に顔出す用事あったし。越田くんと、もしかしたら会えるかなぁって思って」



言い訳じみた私の言葉に、彼は押し黙った。

半分本当、半分嘘のそのせりふは、昨晩彼に渡すチョコレートを作りながら考えたものだ。

こくんと、私は唾を飲み込んだ。
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