先輩、
「大丈夫! お前の卒業証書 俺が持ってっから!!!」
窓から覗き込むようにして、
1人の先輩が
ガッツポーズをしてみせる。
「まじ? 良かった~
こんな俺でも卒業できるってか!」
車から降りた先輩が
卒業証書の入った筒を持ってる
先輩のとこまで駆け寄る。
見覚えのある先輩。
いつも、宏斗先輩と一緒にいた…
無造作にセットされた髪と
笑った顔が 印象的な先輩。
「ッて何、大和すげぇー!
ボタン全部なくなってるやん!!」
宏斗先輩の声が響く。
さっきの先輩が笑う。
大和先輩…かあ。
何度も見かけたのに
名前なんて知らなかった。
顔は知ってるのに…
サッカー部だったことも
たまに 遅刻してたことも
1回だけ 茶髪にで学校に来て
怒られたことがあることも
宏斗先輩が一緒にいたから
知ってるだけ。
『大和先輩』が
女の子に人気だってことも…
2人一緒にいることが多い
先輩たちだから
大和先輩目当てに寄ってきた女の子が
宏斗先輩に話しかけたりもしてて
…そのたびに、嫉妬してた。
『大和先輩』について知ってる情報は
全部 宏斗先輩に繋がってる。
あたしは…本当に
宏斗先輩しか見てなかったんだ。