先輩、
覚えてるかな。
言わなかったけど…
あたしね、中学のとき一度だけ
先輩と話したこと あったんだ。
先輩が まだ
あたしの「憧れ」だった頃。
そんで、
カッコいいけど
怖い人だって 思ってた頃。
部活中 転がってったボールを
投げ返してくれたのが、
先輩だったんだ。
先輩はね、
慌ててお礼を言おうとするあたしに
『1年生?』
って 聞いたの。
あたし、一応2年生なのに。
バスケの実力は
後輩にも負けてるけどさ。
そんなこと思って
ちょっといじけてたら
先輩は ふと
あたしの体操服の名前を見て
『あ、2年生!?』
って
言ったの。
…刺繍の色に
気付いたんだね。
たったそれだけなのに
返してもらったボールを
持つ手まで熱くなってた。
一瞬見せた笑顔が
なんか 可愛くて 可笑しくて
怖さなんて カケラもなくって
無邪気な先輩を
大好きになってた。