先輩、
「なんやねんなあ、あいつ」
宏斗先輩が 呆れたように笑う。
独特のイントネーション。
大阪から引っ越してきたらしくて、
思いっきり関西弁な先輩。
そんなとこも好き…。
隣りに先輩がいるという緊張のあまり
指の先が冷たくなってきた。
そのくせ 顔のほてりは引かなくって
あたしは 手袋を外して
両手を頬に当ててみた。
「なあ、なんて名前やっけ?」
そんなとき
ざわついた空気の中でも
はっきりと聞こえたのは、
間違うはずもない 先輩の声。