【短編】甘い野獣を愛してる
スィート・ミルクチョコレート(ヒロトside)
チョコレート?
ああ、食うぜ。
むしろ大好物だ。
……なんだよ、マリア。
そんな『ヒロトに甘いものは似合わない』みてぇな表情(かお)は、よ。
おいおい。
オレだって、酒だけ飲んでるわけじゃねぇぜ?
羊羹(ようかん)で日本酒を飲むほどツワモノじゃねぇが、チョコレートにワイン、は好きだ。
明日は、バレンタインだ。
二週間前から、ウチのタレント事務所に『俳優・神崎(かんざき)ヒロト』って書かれたでかいダンボール箱がいくつもあったろ?
それに、オレ宛のチョコレートが積まれていくのは、見てて楽しい。
俳優は、人気商売だからな。
大好物のチョコレートで、次の仕事が入る目安になるなんざ、クールだ。
しかも、オレは『俳優体質』とでも言うのか?
いくらチョコレートを食べても太らねぇし。肌荒れもしねぇ。
好きなチョコレートを気が済むまで食べても平気なのさ。
あ?
チョコレートが気に入っている理由?
そうだな。
甘い甘い菓子のクセに、程よい苦味がしっかりあるところがいい。
最初は、ガラスみてぇに冷たくても。
口付けているうちに熱くなる、ところや、滑らかな舌触りが……ふふん。
マリア、お前とのキスみてぇで、ハマってるんだ。
チョコレートも色々種類があるが、どうせなら、激甘のミルクチョコレートだな。
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