【短編】甘い野獣を愛してる
 どうせ、あたしのヒロトがマリアに取られてしまうなら。

 キレイなヒロトが、醜く太ってゆくのなら。

 ヒロトがまだ、カッコいい、イケメン俳優であるうちに、あたしが彼を殺しちゃえば、良いんだわ。

 うん、これは良い考えだと思わない?


 殺すの。


 殺すの。


 ……どんな方法が良いかしら?


 ナイフや包丁……ではあたし、直接ヒロトを刺せないわ。

 ムカシ、やんちゃしてたおかげで、お金を払って殺してくれるところも知っているけど……

 指定した時間にヒロトが居るとは限らないし。

 ……そうだ、毒殺なんてどうかしら。

 丁度、飲んだら死ねる薬のあてがあるし。

 マリアの食べかけのチョコレートに、毒薬をふっておいたら……ヒロトなら食べるんじゃない?

 マリアのチョコレートで死ねるなら、ヒロトも文句ないだろうし。

 マリアも傷つくなら、いい気味だわ。

 もし、失敗してもヒロトはあたしを怒れないし。

 成功したら、あたしもヒロトと死ねるわね。

 一緒に、死んでしまえたら、ヒロトは、永遠にあたしのものよ。

 ヒロト……ヒロト。


 誰よりも、大好きだわ。


 マリアより、あたしの方がヒロトを愛してるのよ。


 そう言えば、今日は、バレンタインだったわね。


 だから、あたしからもチョコレートをあげる。

 スゥイート・ミルクチョコレートに『毒薬』っていう魔法をかければ。

 味は全く変わらないミルク・チョコレートのままに。

 ビター・ブラックチョコレートに大変身。

 食べれば死んじゃうなんて、気持ち的に苦いけど、ま、いいわよね?


 愛情はこもってるわ、二人分。


 だから、残さず全部食べてね。


 これが、セリナの


 さ・い・ご・の・お・ね・が・い・よ


 
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