我妻教育〜番外編〜
「まぁ…。そうだったんですか…」



知らなかったわ。

それぞれに色んな事情があるものなのね…。



桧周さんに深刻ぶる様子はまるでなかったけれど、上手く返す言葉が見当たらなくて私は話題を変えた。



「…聞きましたわ、綾人さんから。

桧周さんが就職されたってこと」


「ああ、そうなんだ。

今、うちの本社で営業みたいなことやってるよ」



「まぁ。そうなのね。

それで、そのまま本社で出世されて、お父様のあとを継がれるんですね」


特に他意なく言ったら、桧周さんは複雑そうに笑った。



「いや、まだまだ先は長いみたいだ。

実は、来年から、海外勤務を命じられてんだ。

親父の考えでは、オレのこと本社でぬくぬく育てるんじゃなくて、あちこちの出社やら工場やらで修業させてェみたいだからな」

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