我妻教育〜番外編〜
「ない」

と、若葉くんは即答で言い切った。


さらにもう一回、

「ない。別に」と繰り返して口にした。

まるで自分にそう言い聞かすかのように。





ちょうど掃除を終えたとき、我が家の玄関から、ゾロゾロと人が出てきた。


どうやら、会合に参加していた客人たちがお帰りになる様子で、先導して出てきたのは、兄の善彦だ。



私は掃除の手をとめ、客人たちに向かってお辞儀をした。


若葉くんも、私のナナメ後ろで生真面目に頭を下げた。



私は客人たちと挨拶程度の言葉を交わし、ホウキを用具入れに片付けに行きながらチラリと客人たちに目を向けた。



比較的年配の方が多い客人たちの中で、一人の若い女性が客人たちを門へ導き、見送っている。

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