我妻教育〜番外編〜
突然呼び捨てされて若干面食らった。


桧周さんに名前を呼ばれるのって初めてだったかしら?



『そっか、よかった。

こんな遅くに電話すんのはどうかと思ったけど、一応仕事終わったから連絡入れとこうと思って』



「それはご丁寧に。お疲れ様でした。

もうご自宅?」


なにげに窓の外に目をやった。


私の部屋の縁側からは、竹林が臨める。


ガラス戸を開けて縁側に腰掛けた。

笹がサワサワと風になびいている。



『いや、まだ会社なんだ。

アイツら迷惑かけてないか?』



「ええ。あの子たち、とても良い子たちですわ。

…若葉くんたちが家出をするのは初めてなんですの?」


『え?』

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