我妻教育〜番外編〜
そんな若葉くんに、話しかけられずにいたら、ハタと目が合った。


何の用だよ?と若葉くんの怪訝な眉間が言っている。



「いえ、車の中に、ハンカチをお忘れになっていたものですから、お届けに…」


「…どうも」


若葉くんは、私から受け取ったハンカチをポケットに強引につっこんだ。



「辞めたっていうのは、野球のお話?」



「関係ない」


言い切ると、若葉くんは友人たちと私を置いて、一人スタスタと校舎の中に消えて行った。



用は済んだから、私も中等部に行こうと思ったら、


「お姉さん、若葉の知り合い?」


若葉くんに話しかけていた少年たちが、今度は私に声をかけてきた。

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