我妻教育〜番外編〜
先生の明るい声に、安心して私の声も明るくなる。



「ええ。わかりました。先生。ありがとうございます」



本当に良かった。

電話を切って安堵のため息をついた。



「…?!」


背後に車輪の音がして、振り返ると、気まずそうな顔をした綾人さんがいた。



「…ごめんね、渡し忘れたものがあって、追いかけてきたんだけど」



私は思わず、“聞かれてしまった”という顔をしてしまった。


綾人さんは、“聞いてはいけないものを聞いてしまった”と申し訳なさげに困惑した表情を浮かべた。



綾人さんが悪いわけじゃない。

気を遣わせてしまってはいけないわ。


私は慌てて手を横に振った。


「どうか、お気になさらないで下さいな」

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