我妻教育〜番外編〜
私は俯いたまま口を開いた。


「困る…とかそういうんじゃないんです。

私は、本当に大丈夫なんです。
だから同情をされたくないんです。

誰にも…家族や友人にだって、ほんの少しだって、気をつかわれたくない。

だから誰にも知られたくない。
それだけですわ」


私は、普通の健康な女の子でありたいの。



「気をつかわれるのが心苦しい…か。
君の気持ちはよくわかる。

僕もこんな見た目だからね」


綾人さんは、あいまいに肩をすくめた。


再び何も答えられずにいると、綾人さんは、仕切り直すようにニッコリ笑って車椅子を私に近づけ、


「それより、琴湖ちゃんに渡すものがあって追いかけてきたんだよ」


小さな紙の包みを差し出してきた。

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