我妻教育〜番外編〜
孝さまの優しさを手の平に感じ、頬と耳が熱くなり、涙が出そうな感覚がして、人形を握りしめた。



そんな私を綾人さんは見つめながら、更に声を優しくした。


「家族にだって友だちにだって気を遣わせたくないって言ったけど、そこまで頑なに考えなくてもいいと思うんだ。

もちろん誰かれ構わずに身体のことは知られたくはないけどね。


自分のことだけ考えて生きてる人間なんていないよ。

他人を想う気持ちが、自身の原動力になることもある。

離れていてもふと思い出して、君を守ってあげたいと思う。

そんな風に想ってもらえることは、本当に幸せなことだと思うから。

素直に受け入れたら、気持ちも楽でいられるよ。

心配させたらいいじゃないか。

だって、心配したい奴は心配したいんだから。


孝市郎の奴、僕には何にも送ってきやしないよ。

パッと見、君より僕の方が同情されてもいいっていうのに」

< 207 / 493 >

この作品をシェア

pagetop